特定贈与信託で行うお得な財産相続

  • 2015/06/02

障害者の問題を考えるときに、避けて通れない問題として「(障害者・障害児の)親亡き後問題」があります。そしてその問題は少なからず経済的な問題と結びついています。
【完全版】成年後見人制度とは で説明した、成年後見制度もそのための制度の一つですが、今回はより一般的に活用可能な、相続を少ない税金で行える「特定贈与信託」についてご案内します。

特定贈与信託とは

特定贈与信託は、特定障害者(重度の心身障害者、中軽度の知的障害および障害等級2級または3級の精神障害等)の方の生活の安定を目的に、そのご親族等が金銭や有価証券等の財産を信託銀行等に信託するものです。信託銀行等は、信託された財産を運用し、特定障害者の方の生活費や医療費として使用できるよう、障害者の方に定期的に金銭を交付します。特定贈与信託を利用すると相続税法の「特定障害者に対する贈与税の非課税制度」により、特別障害者の方については6,000万円、特別障害者以外の特定障害者の方については3,000万円を限度として贈与税が非課税となります。

特定贈与信託の仕組み

確認しておきたい用語(本記事における言い換え)

親族等 委託者
信託銀行等 受託者
特定障害者 受益者
重度の心身障害者
中軽度の知的障害
障害等級2級・3級の精神障害等

特定贈与信託のメリット

特定贈与信託を利用した場合の、障がい者の方のご資産を形成する上でのメリットを整理して解説します。

  • 一定の金額まで贈与税の非課税措置が受けられる
  • 財産が信託銀行等において安全に管理される
  • 贈与税の負担を負うことなく(少なくとも確実に減る)確実に財産を贈与することができる
  • ご親族等が亡くなられた場合であっても、引き続き障がい者の方に生活費や医療費等が信託銀行等から定期的に交付されます

ここで念のため強調しておきますが、この制度は贈与に関する優遇税制なので、財産相続に使えると言っても生前分与の形での利用となります。税制上は非常に有利な制度なので、特定贈与信託を活用することで、ご親族等亡き後の障がい者の方の将来の生活に備えることが可能です。

特定贈与信託に関するよくある質問

誰が信託することができますか?(委託者になれますか?)

特定障害者のご親族、篤志家等の個人に限られます。また、ご親族等が何人かで共同して信託することもでき、1人の障害者に対して複数の親族でみなし贈与を実施することも可能です。法人からの贈与は特定贈与信託の対象にできません。

対象となる障害者の範囲はどのようになっていますか?

対象となる「特定障害者」は、障がいの程度によって「特別障害者」と「特別障害者以外の特定障害者」に分けられており、贈与税の非課税限度額が異なっています。
1.特別障害者
心身障害者の中でも精神または身体に重度の障害がある特別障害者の方は、6,000万円まで贈与税が非課税になります。特別障害者の範囲は、次のとおりです。

  1. 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者または児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センターもしくは精神保健指定医の判定により重度の知的障害者とされた者
  2. 精神障害者保健福祉手帳に障害等級が1級である者として記載されている精神障害者
  3. 1級または2級の身体障害者手帳保有者
  4. 特別項症から第3項症までの戦傷病者手帳所有者
  5. 原子爆弾被爆者として厚生労働大臣の認定を受けている者
  6. 常に就床を要し、複雑な介護を要する者のうち精神または身体の障害の程度が上記1.または3.に準ずるものとして市町村長等の認定を受けている者
  7. 精神または身体に障害のある年齢65歳以上の者で、その障害の程度が上記1.または3.に準ずる者として市町村長等の認定を受けている者

2.特別障害者以外の特定障害者
特別障害者以外で次のいずれかに該当する方は、3,000万円まで贈与税が非課税になります。

  1. 児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センターまたは精神保健指定医の判定により中軽度の知的障害者とされた者
  2. 精神障害者保健福祉手帳に障害等級が2級または3級である者として記載されている精神障害者
  3. 精神または身体に障害のある年齢65歳以上の者で、その障害の程度が上記1.に準ずる者として市町村長等の認定を受けている者

なお、特定障害者(受益者)の行為能力の程度により、成年後見人、保佐人、補助人または任意後見人(以下「後見人等」という)が必要となる場合があります。後見人制度については、詳しくは以下の記事をご覧ください。【完全版】成年後見人制度とは

信託期間はどのようになっていますか?

特定贈与信託は、受益者である特定障害者の死亡の日に終了するとされるので、あらかじめ信託期間を定めることはできません。

信託が終了した場合の残余財産はどうなりますか?

特定障害者が死亡した際の残余財産は、その相続人または受遺者に交付されます。また、委託者が信託をする際にボランティア・障害者団体や社会福祉施設等を指定しておくと、残余財産を寄附して他の障害者のために活用することもできます。

信託できる財産にはどのようなものがありますか?

信託できる財産は、法令により次のとおりとされています。

  1. 金銭
  2. 有価証券
  3. 金銭債権
  4. 立木および立木の生立する土地(立木とともに信託されるものに限ります)
  5. 継続的に相当の対価を得て他人に使用させる不動産
  6. 受益者である特定障害者の居住の用に供する不動産(上記1.から5.までの財産のいずれかとともに信託されるものに限ります。)

特定贈与信託は、定期的に金銭を交付する必要がありますので、収益を生じる財産や換金性の高い財産に限られます。上記1.から5.までの財産については、信託銀行等に個別にご相談ください。信託する財産の価額の評価は、相続税財産評価によります。相続税財産評価については、記事下部の財産相続のよくある質問を確認して下さい。
なお、特別障害者は評価額6,000万円まで、特別障害者以外の特定障害者は評価額3,000万円まで贈与税が非課税となりますので、この金額までは追加して信託することができます。追加の場合、当初信託した信託銀行等の支店(本店)で手続きする必要があります。

金銭の交付はどのように行われるのですか?

特定障害者の生活または療養の需要に応じて、定期的に、実際に必要な金額を金銭で支払われます。

どのような費用がかかりますか?

費用については、個々の信託契約によって定められますが、信託報酬や租税公課、振込手数料、その他事務処理にかかる費用等があります。それらの費用は、信託財産から支払われます。

運用収益に対する税金はどうなりますか?

信託財産の運用により生じる収益は、受益者である特定障害者の所得となりますので、所得の種類に応じて所得税が課税されます。その辺りの計算などは信託銀行がとり行います。

信託するにはどのようなものが必要ですか?

信託銀行等により取扱いが異なることがありますが、概ねそれぞれ次のものが必要になります。

委託者 信託する財産、印鑑
受益者 障害者非課税信託申告書、特定障害者の区分に応じた証明書、住民票、印鑑等

※後見人等が選任されている場合には、後見人等の届出書、印鑑証明書等が必要となります。

財産相続に関するよくある質問

関連事項なので合わせて簡単に説明をしておきます。

障害者の財産相続に関する特例はあるのか?

あります。相続人が85歳未満の障害者のときは、相続税の額から一定の金額を差し引きます(障害者控除)。障害者控除の額は、その相続人(障害者)が満85歳になるまでの年数1年につき6万円です(1年未満切り上げ)。この場合、特別障害者の場合は1年につき12万円となります。

相続に関する税理士報酬の相場は?

税理士事務所が独自の報酬体系を設定しますが、おおむね遺産相続額の0.5%~1%程度です。相続額が多いほど比率は下がる傾向にあります。

あと、総額何円ぐらいだけど報酬はいくら?とだけ聞いても、なかなか答えてくれないと思います。答えてくれたとしてもまず間違いなくそれは割高です。計算や手続きの手間や、相続にかかる相談対応の必要などによって報酬は変わるのが普通なので、相続額だけだと適切な見積もりを出しにくいからです。

税理士によって何が違うのか?

色々ありますが、相続税に関して言うと、相続税額は税理士によって変わってきます。税率や税法は当然日本国民であれば同じなんですが、相続税額は相続税財産評価によって出た数字に、税率をかけて算出されます。財産の評価額を適正な範囲で低く見せるのは、税理士の腕の見せどころです。この辺りによる節税額と、税理士報酬を天秤にかけて良い人を選ぶといいでしょう。

税理士に資産の内訳を明かすのに抵抗がある

色々な方がいるとは思いますが、よく聞くケースです。ただ一つだけお話しておきますと、税理士と税務署はグルではありませんし、税理士に話した内容が税務署に行くことはありません。むしろ逆に税務署に相談に行って、色々と話しをしてしまうと、その事実が問題となって税理士が腕を揮え無いケースもあります。

税務署は親身になって申告の方法などを教えてくれたりして、便利なこともありますが、基本的に税金をどう取るかという立場の機関です。税理士は当然ですが顧客の味方となって、どう安く済ませるかを考えてくれる立場の人間でもあります。信頼できそうな税理士の方であれば、情報についてはむしろ伝えたほうがお得に済む可能性は高いですよ。

特定贈与信託を取り扱っている信託銀行(一部)


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この記事の著者

ケアラー編集部 山本

ケアラー編集部 山本

ケアラー編集部の山本です。
主に障害者に対する支援制度の紹介と企業の障害者雇用の取り組み方などについて、書いています。

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