【障害者雇用】後編:京都・錦市場にある老舗の八百屋さん「かね松」場合

  • 2015/05/08

今回は、引き続き、障害者雇用を義務付けられていないのにも関わらず、実習生を受け入れ、雇用している京都の老舗の八百屋さん「かね松」の上田社長にインタビューさせて頂きます。

【障害者雇用】前編:京都・錦市場にある老舗の八百屋さん「かね松」場合はコチラ。

保護者にお願いしたいこと

社長は知的に障害がある子どもさんを持っている保護者の方にお願いしたいことが3つあると言っていました。

1.言葉遣いについて

障害があるからと言って誰とでもタメ口で話す。学校から実習に行く年頃になっていきなり目上の人と話す時はキチンと話しなさいと言われてもできません。そもそも「キチンってなに?」となったりします。家で社長と社員ごっこ(会社ごっこ)をする。目上の人に話をする時の話し方をごっご遊びから学んで欲しい。人にものを頼む時に「なあなあ、○○」では、さすがに社会では通用しません。

2.3ケタの克服

知的障害のある子どもは100以上の3ケタの感覚がつかみにくく、そのため計算が苦手になります。これも、家で保護者の関わりで分かりやすくなります。新聞に入ってくるチラシを利用します。「キャベツの値段が安い店を教えて?」。スーパーのチラシには写真付きで商品の値段がついています。A店のキャベツは198円、B店のキャベツは178円、C店は188円など。毎日繰り返して見ていると感覚でどの店の値段が安いかがわかってきます。これで3ケタがクリアされると、就労する時に大いに役に立ちます。

3・在庫管理

家でトイレットペーパーなどの在庫管理をしてもらうことです。「トイレットペーパーが残り3個になったら教えてね?」とこれだけでも日々過ごすことで就労する時に在庫管理ができる能力がつくことになります。これのバージョンアップ版が、醤油の分量がボトルの半分になったら、チラシを見て安いところを選んで買ってきてもらう。そのうち店によっての傾向も分析できるようになってきます。A店は○○醤油が安い。B店は△△醤油が安い。醤油なんて難しい漢字も記号として認識でき読めるようになります。

「これだけ、してもらったら。これができるとできないでは全然違います」と上田社長。

障害のある人に対する差別

祇園祭りの日の出来事。

祭り当日、かね松ではトマトのかき氷を販売します。お祭りですから、売り上げ関係なしの販売なので、施設の人に販売・作業を丸投げしてやってもらおうと思って企画しました。若い女の子4人がトマトのかき氷を買おうとお金を払おうとした瞬間。かき氷をつくっている人を見て「きもっ!!」と言って買うのを止めてしまいました。

上田:僕は彼女たちに怒りを感じませんでした。こんなことを言わしてしまう、まわりのおとなが悪いと思いました。だから、そんなことを言う子どもたちがいなくなるまで僕は障害者雇用を止めないと決めました。

また、顔に先天的な異常がある彼は、かき氷売りの呼び込みをしたいと店先で呼び込みをしてくれました。しかし、人通りはあきらかに呼び込みの彼を避けて通る状態。もちろんかき氷は売れません。彼は上田社長に言いました。「僕の顔がこわいからでしょうか?」と。

上田:藤田(私)さん、僕にベストアンサー教えてください。僕はその時どう答えていいのか、固まってしまいました。なにを言っても彼を傷つけてしまいそうで、ベストな答えってなんですか?もちろん正解があるとは思っていないけど…。

私:う~ん、なんて言ったらいいだろう。「あなたは全然悪くないよ」これでは彼の問いの答えになっていないし、薄っぺらい・・

この声掛け。私もこれからの人生問い続けなければならないといけないと思いました。

私:彼はそれからどうしたんですか?続けたんですか?

上田:祭りの期間中呼び込みの仕事を続けました。

私:なんとか成功体験をしてもらいたいと思いますよね。私も支援学校の子どもたちに商店街のイベントのボランティアスタッフとして参加してもらいますけど、チラシ配りの仕事でチラシを受け取ってもらうまで、成功するまで結構がんばります。成功すると嬉しい気持ちになって自らがんばれるようになりますからね。

上田:このベストアンサーを見つけるまで僕はやめません。


上田さんには8歳、6歳、0歳の息子さんがいます。

上田:うちの店には障害のある人が働いているのを息子はあたりまえの風景として見ています。その影響か、公園で初めて会ったダウン症の男の子と違和感なく一緒に遊べたことです。息子の友だちは引いた感じで一緒に遊べませんでした。これだけでもやっていた価値があったと思いました。

 

障害者雇用の納付金制度について

上田:障害者雇用が無理と思う企業は無理してまで雇用しなくてもいいと思います。その代りに納付金を堂々と払ってもらいたい。それに寄付もつけてくれたら、世間の評判をあがると思います。逆に考えてもらえばどうでしょう?「障害者ばかりの職場に健常の自分が入社して、なにも教えてもらえずなにもしないで職場にポツンと置かれたら・・」。だったら、納付金が障害者雇用して戦力と思える企業で助成金として使わしてもらえた方がみんなが幸福になると思います。

 

障がい者雇用達成企業について

上田:大企業は特例子会社など多くの障害者雇用をしています。達成している企業名を知事や市長の公用車にラッピングして貼るとか、バス停に近所の企業は達成してますなど、もっとアピールして欲しいですね。せっかくがんばっている企業をほめてほしいと思います。中小企業での障害者雇用。やってみる価値はあるけど失敗しても楽しい、アホやなあ~と笑える余裕がないと続きません。2年間の助成金ではなく、5年10年と続いている本人と企業にも報奨金とかあったらモチベーションがあがるのにな、と思います。

今後の夢

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上田:これからは、知的障害のある若者や少年院・鑑別所を出た若者と限界集落で農業をしたいです。罪を犯すような子でもお年寄りには優しいと思うから、一緒に農業ができたら面白いと思います。あと、絶対音感のように、絶対味覚を持っている人がいたら雇いたい。「昨日までが旬やった」とか野菜の味覚がわかる人、高給で雇います。

また、商店街での障害者雇用によって、近隣の商店主さんにも、障害者理解が高まってきたそうです。店先での働きぶりを見ていて、「ウチでも働いてもらえるなあ」等の声があるそうです。社長は、「協会賞、知事賞をもらえたのは、80%は社員のおかげ20%は本人さんのおかげと思っています。」と言ってました。

また、障害とは「不幸」ではなく「不便」なだけと思っています。その「不便」を「利便・簡便」にするのが当社の役割であると。福祉経験のある社員は1人もいない店で障害について専門的なことはわからないですが、障害のある人を雇用することの熱い想いは福祉施設や専門家には負けないと言っていました。雇用を続けているうちに第2号ジョブコーチ(注1)の資格を持つ社員や障害者相談員の取得を目指す社員もでてきたそうです。

これからの障害者雇用の変化、そして今後のかね松さん、要チェックですね!

 
 

前編はコチラ。

※ 注1:第2号ジョブコーチ=障害者を雇用する企業に雇用されるジョブコーチ。


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この記事の著者

ふじたあきか

ふじたあきか

障がい者雇用コンサルタント事業。支援学校生徒向け就労体験支援活動や子どもの人権教育ファシリテーターをしています。

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